この記事では、私がアメリカ本社で働くためにやったことを全て公開します。自分自身が日本で働いていて、アメリカで働きたいと考えたときに、なかなかよい情報が得られず本当に苦労しました。そのため、同じような思いを持っている方の役に立てたら嬉しいです。
私の経験:
短大卒業 → 日本企業で営業経験(10年) → 渡米 → コミカレ - コンピューターサイエンス学科卒業(1年)→ 日系アメリカ法人勤務と、並行し大学院 - コンピューターサイエンス学科通学 → Fintech系アメリカ本社から内定獲得
私の英語力:
渡米前のTOEIC点数 600点
渡米後のTOEIC点数 850点
・リーディング:ネイティブと比較をし、50%くらいのスピードで読む
・リスニング:ネイティブと比較をし、70%は理解可能
・ライティング:ネイティブと比較をし、50%くらいのスピードで書く
・スピーキング:ネイティブと比較をし、70%は言いたいことを伝えることが可能
ネイティブと比較をすると、まだまだというところですが、ギリギリついていけているという形です。現在も毎日、英語力はブラッシュアップ中。
私は、すでに日系アメリカ法人で3年ほど勤務をしていますが、今回はFintech系アメリカ本社から内定を得るために行ったことを全て公開したいと思います。
転職活動期間は、2ヶ月でした。
お伝えしたいこと:
アメリカ企業への転職は、語学・VISA・文化の壁など想像以上に大変です。これを行ったら簡単に「アメリカ企業への転職ができる!」という方法はありません。私が、現在の企業に内定をもらうためにかけた時間は、80時間です。正直、この準備期間は、決して簡単ではありませんでした。これほど対策と、事前準備が必要だということをお伝えしたいです。
このブログを見ていただいている方は、「絶対アメリカで働きたい!」と思っている方だと思います。多くの人ができることではありませんが、しかし努力次第で可能性が大いにあります。私の英語力・経歴を見ていただいてお分かりかと思いますが、ピカピカの経歴でもありませんし、英語もまだまだです。このような人間でも、できるのだということをぜひ知っていただき、少しでもあなたの役に立てると嬉しいです。
採用プロセス
応募
まず応募に関して重要なことは、自分の経歴と合致した職務経歴でないと、ほとんどのケースにおいて書類NGになるということです。日本では、ポテンシャル採用含めて、とりあえず応募してみたら面接に行けるかもしれないという概念があるように思いますが、アメリカの場合には、ポテンシャル採用という概念はなく、『経験者採用』となるため、経歴と合致している、もしくはJob DiscriptionのRequirementがあなたの経験と合致している企業を応募することをおすすめします。
日本の書類選考通過率は、3割といわれていますが、アメリカでは1つのポジションに平均で約250人の候補者から応募があり、実際に面接に進めるのは4-6人程度といわれています。
転職活動時に利用する転職サイトは下記です。
書類選考
履歴書の書き方ですが、日本語の履歴書とは大きく異なります。また最近は、多くの企業が『応募者追跡システム(ATS)』を利用した書類選考を行っているため、応募者追跡システム(ATS)を攻略することがもっとも重要になります。
応募をするとそのポジションに対してのあなたの経験が何%合致するかが、順次に判明されます。『応募者追跡システム(ATS)』を攻略することは非常に重要ですが、騙すことができません。ASTは、人間が判断するのと同じことを行います。
1 ATSに適した履歴書のフォーマットは、採用担当者に適した履歴書のフォーマットとよく似ています。人間と同じように、ATSは左から右へ、上から下へと読んでいきますので、それを念頭に置いてフォーマットしてください。例えば、名前と連絡先は一番上に置き、職歴は最新のものから書き始めます。
2 デザインを凝った履歴書は、残念ながら意味を成しません。ほとんどのATSは、履歴書に関連するキーワードをスキャンするために、文書をテキストのみのファイルに変換します。そのため、派手なフォーマットは失われてしまいます。
3 ATSを通過できる履歴書を書くには、重要な情報が記載されていて、それを見つけやすいようにする必要があります。採用担当者は、どのキーワードを検索するかを決めることができます。通常は、仕事を遂行する上で最も重要なスキル、資格、経験、資質などを検索します。たとえば、エンジニアポジションの募集であれば、Job Scriptionに記載してある言語が履歴書にも記載されている必要があります。
私は応募をする前には、必ずJobScan というオンラインのキーワード分析ツールを使っていました。JobScan は、企業が利用しているASTと同じアルゴリズムで判定しています。その甲斐あってか、私は5社応募して、大体1社は面接に進むことができました。
詳しくは『【アメリカ転職 - 完全版】レジュメ(履歴書)の書き方』で解説しています。
電話面接
多くのアメリカ企業は、書類選考が通過した場合には、HR(人事)との電話面接です。大体の企業は30分の設定です。最初の10分で企業から企業および、ポジションの説明があります。その後に、簡単な質問をされます。私が進んだ電話面接全てで、下記の質問を受けました。
・今までの経験を教えてください(Tell me about yourself)
・なぜ〇〇(応募企業)に応募しましたか?(Why do you want to work for our company?)
その他、受ける可能性がある質問
・就業VISAについて(Do you have the working visa?)
・あなたの強み、弱みを教えてください(What are your greatest strengths and weaknesses?)
電話面接では、大まかなスクリーニングが行われます。英語力、候補者の態度を見ている印象を受けました。あまり細かい質問は、電話面接では受けません。私はネイティブと比較をするとやはり英語力には自信がなかったため、電話面接ではなく、VIDEO面接(Zoom)を依頼していました。相手の顔が見れた方が、多少なりともいい印象を残せると考えたからです。
課題
ロール(職種)によりますが、多くの企業で課題が出るケースがほとんどでしょう。下記は例となります。
- Engineer:シンプルなエンジンを作成。エラーを探す
- Business development :応募会社をdevelopment させるアイディアのプレゼンテーション
- Sales:ケーススタディ
- Marketing :応募会社のMarketingのプレゼンテーション
- Data Analyst :データを与えられそのデータから読み取れるストーリーをプレゼンテーション。 Data Scientist:与えられたデータからアルゴリズムを組む
- Product Management:応募会社のProduct改善のプレゼンテーション
などのような形です。
便利ツール:exponent
現場面接
現場面接では、課題に対してのディスカッション面接に加えて、チームメンバーや、他の部署の人たちとの面接が実施されます。多くの会社では、1:1の面接が多く、1:複数ということは、あまりないでしょう。現場面接では、課題からみえるあなたのスキルの確認と、チームに迎え入れるための相性確認となります。現場面接は、面接官だけでなく、あなたもしっかりと会社やチームの雰囲気を確認しましょう。
特にチームメンバーは常に一緒に働く仲間のため、非常に重要です。
私が準備したこと:
転職活動を始めたら片時も話せないのが、Glassdoor。Glassdoorは、情報の宝庫です。
まず、行うことは、Glassdoor → 応募企業ページ→ Interviews へ進み、過去にその企業面接へ進んだ候補者からの面接質問を確認することです。その内容をすべて、Wordもしくは、エクセルにコピーしました。私は、Business Developmentの職種を応募していただめ、Marketing、Product Management、Salesなど文系に近い職種の面接内容も全てコピーしました。企業によっては、何100個あります。私が実際にコピーした数も200を超えていました。そこから、同じような質問を削除します。そして、残った質問全てに自分の回答を考えます。
全ての質問に異なる回答を用意する必要はありません。例えば、「今までで一番、達成してよかったことは?」と、「今まで一番大変だったとは?」の回答は同じにしてよいのです。そのように考えると、4-5くらいのストーリを準備し、そのストーリーを軸として回答し、質問によって少しだけ変えるという技をつかうことができます。
回答が思いつかなければ、いくらでもGoogleで検索できます。しかし、重要なのはGoogleからアイディアをもらってもよいのですが、最終的な回答は『自分の本当の体験』にするということです。面接では、緊張することが想定されます。パッと質問されたときに、やはり自分が体験したことでないと覚えていませんし、話をすることができないのです。そのため、必ず自分の体験を回答に使いましょう。
もう一つ重要なのは、Job Descriptionをしっかり読み込むということです。Requirement(求めるスキル)に、Cross functionalで仕事ができる方という記載があった場合には、Cross functionalのストーリーを聞かれる可能性が高いため、事前読み込みを徹底し、準備に備えましょう。
参考までに、Business Development として私が準備した質問をご紹介します。
- What is your greatest strength?
- What is your greatest weakness?
- Why should we hire you?
- Tell me about a time you showed leadership
- What would your co-workers say about you?
- Tell me about a time you had to manage conflicting priorities.
- Where do you see yourself in 5 years?
- Describe your leadership style.
- Tell me about a time you failed or made a mistake.
- Tell me about a time you worked with difficult person
- Tell me about a time you had to persuade someone.
- Tell me about a time you disagreed with someone.
- Tell me about a time you had to handle pressure.
- What do you enjoy about being in a customer facing role
- What would you do if you face a challenge with a customer? What approach would you take?
- Challenging situation with a customer or upsetting customer?
- Challenging situation with a colleague?
- Working under pressure or with a tight schedule?
- Tell me about a time where you worked cross-functionally on a project and
- things didn't work out as planned.
- Tell me about a time you had to give feedback to a manager. How did you
- approach it and what was the outcome?
- Imagine you are the director of operations and are considering setting up a user operations for the APAC region. Talk me through your considerations.
- Tell me about a time that you improved a process.
- What do you consider is excellent service and tell me about a time where you delivered it.
- For the first 12-18 months you'll be answering queries from users. After this time you'll continue to answer queries but become involved in project work. Are you ok with that?
- Tell me about a time where you needed to reach out to someone else to help solve a problem or progress a project but you didn't hear back. What approach did you take? What was the outcome?Describe how you would handle a situation of an employee that is a low performer.
- Describe how you would set goals for the team by taking the goals we provide you and reorganizing them.
- Tell me about a time that you had to work with a team and it didn't go well.
- How do you handle competing priorities?
- How would you handle a disagreement with a sales person?
- How would you handle a disengaged client?
- How would you prep for a meeting with a client regarding a new product you know nothing about?
Glassdoorで情報が全く載っていないという企業の場合には、職種名+ interviews questionsと検索して、質問が多く載っているWEBサイト5つほどの内容を全て準備しましょう。「Product manager interviews questions」「Engineer interviews questions」のような形です。
そして、自分の回答まで準備をしたら、何度も声に出してイメージトレーニングをし、答えられるようになるまでこれを続けます(ここのパートが英語がハードルの場合には、辛いです)。
リファレンス
全ての面接が終了すると全ての面接官からのフィードバックがHRに集まるまで、1週間ほどかかるケースが多いでしょう。企業によっては、その候補者を採用するかどうかのミーティングを面接官全員で行う会社もあります。
合格となった場合には、多くの会社でリファレンスが実施されます。
リファレンスとは、以前の雇用主や上司、学校などに連絡を取り、候補者の経歴や経験、スキルについて詳しく確認します。しかし、勝手に連絡を取ることは禁止されており、候補者が選んだ人に対して電話をし、確認します。
内定&給与交渉
リファレンス後に、合格だった場合、オファーレターが到着します。これを正式に『内定』と呼びます。アメリカでは多くの人が、給与の交渉をします。給与の交渉をしても、内定は取り消されませんのでご安心ください。ちなみに、口頭で内定を告られた場合には、証拠となるオファーレターを手にしたあとに、給与交渉を行いましょう。
アメリカでは、入社後にも昇格の交渉をしますが、経験上、入社前が一番交渉が簡単です。入社後の昇格交渉は、意外と簡単ではありません。
・基本給は、$〇〇
・RSU(Restricted Stock Unit )は、$〇〇
・サインオンボーナス(入社準備金)は、$〇〇
のような形で提示されます。
HRも交渉されることはよくあることだと認識ているため、驚きません。交渉する場合には、理由が必要です。
・過去の給与との比較で、$〇〇以上は欲しい
・他社からオファーをもらっており、$〇〇である
・Glassdoorとの比較で、$〇〇以上は欲しい
・住んでいるエリアの物価を考え、$〇〇以上は欲しい
住んでいるエリアの平均年収は、Googleで、「Tokyo average marketing(職種)) salary」や、Salary.comで確認することができます。
企業によっては、基本給やStockは上げることが難しいけれども、サインオンボーナスはそれほど難しくないと聞いたことがあります。交渉のやりとりは、一度で終了したいことが多いです。しかし諦めずに、交渉を続けましょう。交渉で大事なポイントは、必ず理由を伝えることです。
就業ビザ
ビザの種類
アメリカにはさまざまなビザの種類があり、複雑です。個人のキャリアや、事情により取得できるビザが異なるため、多くの人は、移民弁護士に相談しながら話を進めます。
大きく分けると、下記が内容になります。
- 短期商用・観光ビザ(Bビザ)
- 学生ビザ(Fビザ・Mビザ)
- 研修ビザ(Jビザ)
- 専門職・就労ビザ(Hビザ)
- 商用・管理職ビザ(Eビザ・Lビザ)
- 永住権(グリーンカード)
日本在住者が、アメリカで働きたいと考えた時、現実的な方法は下記3つのみです。
【Fビザ】アメリカの学校で学生ビザを取得。在学中はCurricular Practical Training(CPT)で、そして卒業後はOptional Practical Training(OPT)で就労
【Jビザ】研修・インターンシップビザでアメリカ企業に就労
【Lビザ】日本から赴任者としてアメリカ企業に就労
実際、【Jビザ】【Lビザ】は、アメリカで働く先がすでに決まっている必要があります。多くの企業は、応募時に「ビザスポンサーシップが必要かどうか」という回答にこえる必要があります。そこで、「YES」と答えた場合には、多くのケースで面接に進むことができません。そういった意味からも、応募時にはすでにビザを持っている必要があります。
その場合には、現実的には【Fビザ】になります。私もこの方法でアメリカに滞在しつづけています。Fビザで勤務をし続け、H1Bビザを会社サポートしてもらうケースがもっとも多いように感じます。しかし、H1Bビザをサポートしてくれる企業も多くはありません。且つ、職種によりサポートされないケースもあります(「ビザとは」で、先ほど紹介した職種と同様です)。Google、FacebookでもエンジニアはH1Bサポートをするけれども、マーケティング・営業はしませんよ。と公言しています。
ちなみに、H1Bは抽選となり、通過率は38%です。ビザについては、あまり公に書けない部分も多く、『【アメリカ移住】H1Bを取得できなくても、合法的にアメリカに残る方法』で細かく解説しています。
CPT / OPT / H1戦略
Fビザについて解説しました。Fビザで労働できる種類は3つです。
CPT (Curriculum Practical Training)
CPT(Curricular Practical Training)とは、留学生が職業訓練を受けたり、有給インターンシップに参加するための資格です。学生は、フルタイム(週20時間以上)またはパートタイム(週20時間以下)で働き、米ドルで収入を得て、興味のある分野で仕事の経験を積むことができます。CPTが許可される期間は、学校により異なります。例えば、2セメスター(1学年分)以上取得したあとに、CPTが取得可能などというルールが学校により異なります。注意すべきは、CPTをフルタイムの労働で365日使ってしまうと、卒業後後にOPTを取得することができなくなるということです。ですので、卒業後にOPTの申請をしたい方は、CPTを365日以上(364日までに抑える必要があります)使いきらないよう注意しましょう。
OPT
OPT(Optional Practical Training)とは、フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後にフルタイムで就労することができる制度です。大学卒業後に、1年間の就業を与えられますが、STEM学科を卒業すると3年間取得することができます。そのため、アメリカで働くということを考えた時には、学科選びも重要になります。OPTは、卒業の60日前から卒業後60日以内に移民局へ申請を行わなければなりません。未雇用の日数がトレーニング開始から合計して90日になると、その時点でOPT は終了となり、60日間以内にアメリカを出国するか、SEVPに認可されているほかの学校に入学するか、ほかの滞在資格を確保しなければ、不法滞在となってしまいます。
H1B
職務が求める特定分野での学位を4年制大学以上で取得しているか、短大卒業+最低6年間の専門職経験が必須応募条件となります。応募の場合、最低給与基準が導入されたりと、動きが大きいH1B。H1Bは、企業がサポートしてくれる内容となるため、入社前もしくは、入社後に上司に交渉する必要があります。こちらについては、応募前に弁護士に必ず確認することをおすすめします。
その他
このように、なかなか簡単ではないビザ問題。コロナ後のアメリカでは、多くの企業でWork from home foreverというポジションが劇的に増えています。時差の問題はありますが、日本にいながら、アメリカ企業で、リモートで働き続けるという手も増えてくると思います。
応募職種がマッチしていれば、日本からの勤務も可能にしてくれる企業が増えてくると考えています。このように、アメリカ企業でリモートとして働き、アメリカ企業に数年慣れる経験をしたのちに、実際現地で働くという方法は、一つの有効な手ではないかと考えます。
そのような経験は、次にアメリカ企業に応募する場合に、大きなアドバンテージになります。